生前贈与におけるトラブルを回避するために知っておきたい「名義預金問題」

 相続税の節税のために,親や祖父母が子ども名義の口座を作ってその口座にお金を預けている方や,専業主婦の妻名義の口座にお金を移している方は少なからずいらっしゃると思います。

相続人名義の預金口座を作りその口座にお金を移していくものの,通帳やカードは相続人に渡さずに自分で管理するというやり方は「名義預金」として,課税されてしまうおそれがあります。

名義預金とは,預金口座の名義人と実際に預金をしている人が異なる預金をいい,相続の際には被相続人の財産とみなされる預金のことをいいます。

相続税の税務調査では亡くなられた方が所有していた口座だけでなく,そのご家族名義の口座まで照会されます。そこで名義預金の有無が調べられ,名義預金がみつかれば相続税が課税されることになります。さらに,相続税の申告漏れとして修正申告と延滞税などの追加納税もしなければなりません。

相続税対策として,生前にお金を相続人名義の口座に移していても,名義預金とされれば相続税の課税対象となってしまい対策を講じた意味がなくなってしまいます。名義預金かどうかの判断においては,通帳やカードの名義人が自分の預金であることを知っていたかどうか,その預金を名義人自身が管理していたか,その預金のお金はどのようにして手に入れたかがポイントとなります。

被相続人が残した預金が名義預金とならないためには,名義人の意思確認の上口座を開設して通帳やカードの管理は名義人自身が行うようにすること,ある程度まとまった金額を口座に移すときには生前贈与を行って預金を相続人のものにしておくことが必要です。その場合は,贈与税の申告とともに,税務調査において贈与を証明しやすくするために,贈与契約書などの書類を作成しておきましょう。