自分の財産を自分の思った通りの人へ「家族信託活用例⑤」

 AさんはBさんと再婚しており,Bさんとの子Cさん,前配偶者との間の子Dさんがいます。Dさんとは音信不通であることもあり,Aさんは可能な限り財産をBさんとCさんにだけ相続させたいと考えています。

【家族信託のスキーム】

 Aさんを委託者兼受益者,Bさんを受託者,BさんとCさんを二次受益者とし,全財産を信託財産とする家族信託契約を締結します。

【家族信託のメリット】

・全財産が受益権という権利に変わるため,相続手続は一切関係なく,受益権として二次受益者に指定された者に承継させることができます。

・Dさんが遺留分減殺請求をしてくる可能性があるますが,その場合でも,全財産が受益権という権利に変わっているので,少なくとも自宅不動産が法定相続人の共有となることはありません(※)。

・遺留分減殺請求に対しては,生命保険を残しておくことで対応することができます。

※遺留分減殺請求とは

 被相続人(死亡した者のこと)の財産のうち,兄弟姉妹を除く相続人が最低限確保できる相続財産に対する割合を遺留分といいます。この遺留分を侵害する遺贈などが行われた場合,遺留分を侵害された相続人は,侵害をした者に対し,遺留分の限度で財産の取戻しを求めることができます。これを遺留分減殺請求といいます。遺留分減殺請求をすると,遺留分を侵害する限りで遺贈が失効し,目的物の所有権が遺留分権利者に戻るため,遺留分権利者と遺贈を受けた者との間で目的物が共有状態となることがあり,その不都合性が指摘されてきました。しかし,民法改正により,遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求権」に変更され,目的物の返還請求ではなく金銭の返還請求に変わりました。そのため,改正民法のもとでは,遺留分減殺請求による上記問題は解消されたといえます。