認知症対策のために「家族信託活用例①」

 Aさん(東京都在住)の母Bさん(80歳,新潟県在住)は,新潟県にある実家で一人暮らしをしていて,実家不動産は,今はBさんの単独所有名義となっています。Aさんは,Bさんを介護施設に転居させるために,実家不動産を売却して,Bさんの施設への入居費やその後の介護費用に充てたいと思っています。ところが,売却する前にBさんが認知症になってしまうのではないかと心配しています。

【家族信託のスキーム】

 Bさんを委託者兼当初受益者,Aさんを受託者兼二次受益者とし,信託財産を自宅不動産とする家族信託契約を締結します。自宅不動産の名義のみをAさんに変更するため,自宅不動産について「所有権移転及び信託」の登記をします。

【家族信託を利用するメリット】

・Bさんが認知症になっても,Aさんが受託者の権限で自宅不動産を売却し,金銭信託に変換することができます。

・不動産が金銭信託に変換されても,Bさんの財産であるため,Bさんのために自由に使うことができます。

・Bさん死亡時には,Bさんの相続として相続税が発生しますが,Bさんが持っていた受益権は遺産分割協議によることなく,二次受益者でもあるAさんに移動し,Aさんのために不動産を活用することができます。