障がいのある家族の生活のために「家族信託活用例②」 

 AさんとBさん夫妻には,長男Cさんと次男Dさんがいますが,Dさんは重度の精神障がい者であり,自立生活が不可能な状態です。Aさん夫妻はDさんの面倒を生涯看てやりたいと考えて蓄財してきており,自分たちの死後は財産をCさんとDさんに等分に相続させたいと考えていました。Aさん夫妻は,自分たちがDさんの世話をできなくなったあとは,CさんにDさんの後見人となってもらいたいと思っている一方で,Cさんが財産を適切にDさんの世話のためだけに使ってくれるか心配しています。

【家族信託のスキーム】

 Aさん及びBさんを委託者兼当初受益者,Cさんを受託者,CさんとDさんが均等割合で二次受益者,Cさんを三次受益者とする家族信託契約を締結し,二次受益者Dさんには第三者である後見人や施設の請求に応じて,必要な金額のみを受託者から給付するという内容の家族信託契約を締結します。

【家族信託のメリット】

・Cさんは受託者という立場となるので,信託財産を分別管理する義務が生じ,他には流用できなくなるため,財産をDさんの世話のためだけに使わなくてはなりません。

・Dさんの生活費等は,一度にDさんに渡してしまうのではなく,家族信託契約に基づき,受託者Cさんから給付することになるので,的確な管理が可能となります。

・Dさんの後見人も多額の財産を管理する責任がなくなり,本来の後見業務に専念することができます。

・Dさんが死亡した際には,その受益権は兄Cさんにスムーズに移動することになり,Dさんの相続にする混乱は生じません。