遺言作成のすすめ 

 みなさんは遺言について「相続税がかかるような財産をたくさん持っている人が書くもの」「自分が死ぬ間際に親族に話せばいいから遺言書を書く必要はない」といったイメージを持っていませんか。

 実は相続税がかからない方でも相続をめぐるトラブル「争続」に巻き込まれる方は少なからずおられます。また,遺言は自分の財産を引き継ぐだけでなく,「遺骨を海に散骨してほしい」「ペットの面倒をみてほしい」といった財産の引き継ぎ以外の希望を託すことができるのです。遺言を書いておけば自分の死後の財産管理だけでなく,財産に関するもの以外の身辺整理を心配する必要がなくなるといえます。

また,自分の意思を死ぬ間際に話すだけでは,後々親族で相続トラブルがおきたときに亡くなった方の意思が形として残っていない以上,そのトラブルが拡大するおそれがあります。以上のような理由から,遺言は相続財産の過多に関わりなくだれでも作ったほうがよいものなのです。

 最新の高齢社会白書によると日本の平均寿命は男性が約81歳,女性が87歳ですが,日常的な介護を必要とせず正常な判断能力のもとで生活ができる生存期間いわゆる健康寿命は男性の場合約72歳,女性は約75歳です。遺言を書くには正常な判断能力が必要となります。

いざ遺言を書こうと思い立ったときに,判断能力が低下していると有効な遺言を書くことができません。また,60歳を超えると,いつどのような事態が起きても不思議ではありません。したがって,相続財産についてじっくりと考えることができ,健康にも問題が起きるリスクの高くなる60歳からが遺言作成に適している時期と言えます。

 遺言の方式については民法という法律に定めがあり,次の項でその方式についてご説明しますが,平成31年の民法改正によって自筆証書遺言の作成が容易になり,これに伴い同遺言を法務局で保管する制度が設けられました。