空き家対策のために「家族信託活用例④」

 Aさん(宮城県在住)は東京都内に両親から相続した不動産を所有していますが,空き家となっているので良い買い手が見つかったら売却したいと考えていました。しかし,Aさんは最近少し体調を崩すようになってきて,自らの意思で不動産取引ができる時間があまり残されていないと考えていたところ,Aさんの友人で不動産業を営む株式会社Xを経営するBさんが,Aさん所有の不動産を購入してAさんの代わりに良い買い手を見つけて売却したり,場合によっては自ら居住したいとAさんに提案しています。

【家族信託のスキーム】

 Aさんを委託者兼当初受益者,XもしくはBさんを受託者,Aさんの相続人の一人(売却代金を取得させたい人)を二次受益者とし,売却する不動産を信託財産とする家族信託契約を締結します。その後にAさんの受益権をXもしくはBさん(受託者となっていない方)に売却します。

【家族信託のメリット】

・Aさんが売却するのは所有権ではなく,受益権となるので,もし売買手続き前にAさんが認知症になったり死亡したりしても,受託者の権限で売買手続を合法的に行うことができます。

・信託による受託者への名義変更の登記と売買による受益者交代の登記がなされ,対外的にも権利が移動したことが公示されます。

・不動産の買い手に家族信託契約を継続したいとの意向があれば,受益権と同時に受託者を買い手の親族などに変更すればそのままの形で家族信託契約全体を移動することも可能です。