事業承継対策のために「家族信託活用例⑥」

 Aさんは株式会社Xの創業経営者です。Aさんには後継候補者として長男Bさんがおり,すでにX社に取締役として入社しています。AさんはいずれBさんに代表取締役を交替し,X社の経営を任せたいと考えていますが,現時点でBさんに経営権のすべてを持たせるのは時期尚早と考えています。

【家族信託のスキーム】

 Aさん所有のX社株式につき,Aさんを委託者兼当初受益者,Bさんを受託者,二次受益者をBさんとする家族信託契約を締結し,X社株式の名義のみをBさんに変更します。そして議決権の行使方法を指図することができる「指図権」をAさんに持たせるように設定します。

【家族信託のメリット】

・家族信託では,財産権がAさんからBさんへ移転しないので,株式信託の場合には課税が発生しません。

・家族信託の手続きも登記等の必要がないため極めて簡単です。

・契約開始後は,X社株式の議決権のみが後継者Bさんに移動しますが,Aさんが元気な間は指図権に基づき経営に携わることができ,判断能力が低下した場合には,Cさんが完全に経営権を握ることができます。