解決事例②(家族信託)
信託による解決ではありませんが,扱った事案で信託を使えばもう少し柔軟に処理できた事案があったので紹介します。
事案は,配偶者及び子どものいないおばが死亡し,その兄弟の子であるおい・めいがおばを相続したという事案です。おばには,事業用資産,居住用資産,預貯金,宝石類,貸金,等の資産と債務と消極財がありましたが,おい・めいのうち1人が他から依頼されて,遺産をすべて現金に換え,その手続費用を差し引いた上,残金を法定相続分に従い分配することになりました。
この事案では,本来長引くことの多い土地・建物等の資産の早期売却が可能であったことから,依頼を受けた相続人の1人から委任を受けた当事務所は,特に信託によることなく,すべての資産を換価し,費用を差し引いた上で,全相続人に対し法定相続分に従い,分配しました。
しかし,事業用資産及び・居住用資産の売却に時間を要し,事業用資産の収益・費用等の管理が必要となる場合,他から依頼された相続人を受託者,相続人全員を委託者兼受益者とする信託を設定して,資産の名義を受託者に移転して,管理・回収を行うことが,この依頼の趣旨に最もよく沿うものでした。今回の事例では,信託の利用に至りませんでしたが,同様の事案においては積極的に信託の利用を依頼者及び関係者に勧めていきたいと思います。